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『恐れを知らぬ愚者どもの国』ルリエによるイリフ&ペトロフ評論

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▷ヤーコフ・ソロモノヴィチ・ルリエによる評論『恐れを知らぬ愚者どもの国』の内容整理・紹介 目次 本書について(原題、著者ルリエについて、題名の由来) 本書の要旨 ルリエによるイリフ&ペトロフ作品解題 サラスキナのイリフ&ペトロフ批判に対するルリエの意見 本書について 原題  Яков Соломонович Лурье. В краю непуганых идиотов. Paris: La Presse libre. 1983. Переизд.: СПб.: Изд. ЕУСПб. 2005   ▷初版は、1983年パリ(クルデューモフという筆名で刊行) ▷再版は、2005年サンクトペテルブルク(ルリエの名で刊行) ▷再版では、初版が出た1983年以降の批評や研究にも言及しているが、著者の主張は初版と再版で大きく違わない 初版書影(クルデューモフ名義) 左の建物がヘラクレス(『黄金の仔牛』に登場)、 右の建物がKLOOP(同名の短編小説に登場)。 再版書影 左がイリフ、右がペトロフ 著者について ヤーコフ・ルリエ(1921〜1996)は中世を主なフィールドとする文献学の学者。 検閲などで複雑な変遷を辿っているイリフ&ペトロフのテクストを読み解くのに、中世の年代記を読み慣れているルリエは適材だ、と再版の序文でオムリー・ローネンは述べている。 題名の由来 イリフのノートに書かれている次の文章による。 …これまでの10年人の心を掴んできたものが、この先の10年非難される。これまで人の心を掴んできたからという理由で非難されるのだ。恐れを知らぬ愚者どもの中にいると気が滅入る… “…Раньше десять лет хвалили, теперь десять лет будут ругать. Ругать будут за то, за что раньше хвалили. Тяжело и нудно среди непуганых идиотов…” 「恐れを知らぬ愚者ども」という表現は、プリーシュヴィンの『恐れを知らぬ鳥たちの国』«В краю непуганых птиц»を踏まえている。なぜその作品を踏まえているかについても、本書で論じられている(第6章)。 また、クルデューモフという初版の筆名も、イリフのノートの記述から取られている。...